小説


      SMF小説

                                    異空の神

第1巻



第 3 章

現 実 の 異 空



 銀行襲撃 ???



「それにしても、貴方としてはやっぱり少しでも早く正当なI Dを取り戻したい筈だわ」
エリザベスが続ける
「貴方のIDを納得いく形で作り上げるには、
ちょっと、人の心か頭かに、強い暗示を与え、たり、
記憶を摩り替えたり、が必要!!になるかも!」

「それに私とのこと、そしてデイブと貴方との同一性といったことを無視して、
IDを作り上げるようなことをすると、
今度はまた別の解決すべき問題が出てきてしまうし・・・・」
「すべてがスンナリ解決してしまうようなIDの確立ができないものかしら・・・」
しばらく考え込んでいたエリザベスがまた堰を切ったように話し出す。

「目にしている書類の内容や写真をすりかえる、
といって悪ければ、都合に合わせて書き換えることが
貴方に出来そうなのは飛行機の中で実証済み」
「貴方は自分でも覚えていないでしょうけど、
あのパンフレットの字体を何箇所か読みやすいものにしたり
大きくしたり、ご親切にしてたわ」

「書き換えなければならないのは
コンピュータのハードディスクかもしれないけれど・・・・・

「TVの生番組でキャスターがコメントしているところに、
念を送って間違ったことを言わせることは出来るかしら?
それができたら、もう殆どのことは大丈夫ということになるわね、
ブライアン、やってみて、」酔いのせいかエリザベスの発想が大胆になってきていた。
TVをつけると天気予報の人気キャスターがコメントしているところだった。
「カリフォルニアは・・・サンフランシスコ・・・この季節にしては、
かなり寒い朝でしょう」

天気マークは午前中曇り、午後は晴れと出ている、
ロサンゼルスの天気に移るところで
ブライアンは思い切り念じてみた。
まるで電波を手繰るように一瞬でキャスターのいるテレビ局の建物・・・
そしてスタジオへと意識が吸い寄せられ
喋っているキャスターに行き着く、
「サア言うんだ」エリザベスがびっくりするほどのすごみのある声がブライアンの口からもれる、
キャスターが続けていた「では、ロサンジェルスです。
『大体天気はいいに決まってるでしょう、云うのも馬鹿馬鹿しい、
たまには、槍とか鉄砲とか、矢が飛んでくるかもしれないよ、ふぁファふぁ』」
そこまでいうとそのキャスターは顔色を蒼白にし、口ごもりながら、
「なんであんなことを・・・どうも失礼いたしましたロスは明日もいい天気でしょう
・・・槍は降りません・・」

やってみろと言い出したエリザベス自身が一瞬身をこわばらせる。
「い、い今の、貴方がやらせたのね、凄い、驚いた・・・・
でもあまり罪はないからいいんじゃない、それにしても・・・凄い、
ちょっと恐いわね」「私にはあんな冗談しないでね、アナタ」
酔いが醒めてしまったような顔で、真顔になったエリザベスが
やっとという感じで声を振り絞っていた。

「こ、これで、最初にやるべきことは決まったわ」
「9・11の飛行機撃墜で犠牲になったブライアン・ラウルの戸籍を復活させて
貴方が彼になりきるのよ」
「たしかアトランタよ、市役所の戸籍係を、
雑誌の取材だという触れ込みで二人で訪ねましょう、
何か不信そうに思われたって、貴方の魔法の能力ですべて片付いてしまう」
「インターネットで航空券を予約しましょう」というとまたパソコンに向かう。

その間ブライアンは自分自身とエリザベスを常に安全な、
目に見えないバリヤーで包み込んでおくことが出来ないものかと考えていた。
手始めにソファーの前のセンターテーブルに載せてあったブライアンの携帯を
バリアーで包み込むイメージを描き、念じてみる。
次に携帯を手にすると暖炉の上の壁に軽く投げつけてみた。
結構勢い良く壁にぶつかりそうだった携帯はまるで意志があるかのように
直前で急ブレーキがかかりゆっくりと暖炉の棚のうえにフンワリと落ちていた。
ブライアンの目には携帯を包むバリヤーがうっすらと見える気がしていた。

ブライアンが改めてパソコンに向かうエリザベスの後ろ姿をとらえながら、
集中させた思念で包みバリアーを構築していく作業をイメージし一瞬強力な念を刻んでいた。

エリザベスがなにごともないように振り返る。
「明日の朝少し頑張って9時の便で立ってもアトランタ到着は夕方5時、
フライト時間は5時間だけど3時間時差があるから、
その日のうちに次の行動を起こすのは無理・・・
これじゃ、急いでも意味がないから、
アトランタの市役所に行くのは明後日ということにして、
明日午前11時の便を予約したけれどいいかしら?」


「これだと夕刻7時到着で、市内のホテルに落ち着いたら、
もうディナーの時間、有名なステーキの美味しいレストランでお食事して
ホテルのバーで夜景を楽しむ・・・こんなプランでどうかしら」
「なんだか本当のハネムーンだね、
ところで、いくら君が金持ちでも君にばかりお金の負担をさせていて気になっているんだ」

「だってNYの秘密の金庫には
びっくりするほどのお金や宝石、債権が入っているはずでしょう」

「イヤ・・あれこそあの場で浮かんだアイデアで、
作り話だよ、実際は2500ドル25人から拝借したあの話だけなんだ」

エリザベスが「ちょっと待って」と言いながら2階に飛んでいき、
寝室のクロゼットの扉を開ける様子がわかる。
「貴方のズボンに入っているこのディンプル キーと金属で出来たようなこのカードは、何なの?
カードには住所も書かれているし、
注意書きとして、掌紋照合と網膜照合が必要と書いてあるのよ」
「あら、この住所ロスよ「住所はNYじゃないけれど他は貴方のお話のとおりじゃない」
エリザベスがそう言いながら降りてくる。
ブライアンが驚愕の表情を浮かべエリザベスから受け取ったキーとカードを手にする、
「僕はこんなものを見るのは今がはじめてだ」

「近いうちに、カードにあるこのアドレス・・・ここを調べる必要があるかも知れないけれど
・・・今はちょっと行く段階と思えない、何が待っているのか不安な感じがする」
「当面必要なお金なら、ちょっと考えがあるから」
ブライアンはカードとキーの意味するものが何なのか良くわからないまま、答えていた。

「私のお金は貴方のお金と同じ、気にせず一緒に使いましょう」
エリザベスがなぐさめるように言う。
ブライアンは「ちょっと、実験してみたいことがあるので出かけたい、
と言うと身支度もそこそこに

「待って、何処に行くの」というエリザベスの声にも耳を貸さず、
エレベーターで1階のロビーに降り、外の通りへ出た。

フロントマンの「お出かけですか」と言う声もうわのそらに聞いていた。
記憶をたよりに歩道を右に200Mほど行くと、記憶のとおり、今はもう閉まっている銀行があった、
最近このあたりの新興富裕層を目当てに出来た金融複合店、らしかった。
ブライアンが知る筈もなかったが、最近立てられたこの建物の地下は、
厳重な警備と最新設備を施された現金集積所といった位置づけになっていたのだ。

辺りに人影がないのを確認し建物の中へと意識を集中させる。
奥の金庫室に感覚が届くとさらにその中に意識を潜り込ませる、
そこには何百とも思える引き出し式の貸金庫らしいものが並んでいたが、
本来の銀行の金庫と言う感じの場所ではなかった。
さらに意識を鋭くしていくと、奥の扉から地下に階段があり
その下の小さなロビーの向こうにそれらしい扉があった。
その奥が本当の金庫室だった。中にはライトがついており、様子がハッキリとわかる、
ブライアンの能力をもってしてもライトが点いているほうが情況は掴みやすいようだった。
驚いたことにそこには大変な額の札束が積まれていた。
いくつかにまとめられた、新札とはことなる100ドル紙幣だけに意識を集中すると
およそ200万ドルほどあるのがわかる、
ライトが点いているのは看視カメラのため、かも知れない。
丹念に意識を巡らすと、なんと2台のカメラが稼動しているのがわかった。
何事も起きなければ看視画像を再生してみる筈はないと思ったが、
カメラの先を探り、録画装置とカメラの電源を同時に切る。

今度はもう一度念を込め、自らを意識のベールで覆い、
その金庫なかに自分自身を移動させる、
何の問題もなくその瞬間ブライアンは金庫室の中だった。
つぎに、使用済み紙幣の山の全体を意識のベールで包み込むとその脇のスペースに複製させる。
簡単だった・・・・

次にもともとの本物の紙幣の山を意識で包みエリザベスのアパートの寝室を思い浮かべる、
無論エリザベスはそこには居ない。まだリビングにいるのだ、
札束の山をベッドの上にそっと置くと、外の歩道の様子を探り
誰も近くに居ないのを見すます。ブライアンは瞬間でそこに移動していた。
忘れずカメラ、と録画装置の電源を元に戻す。
あとは簡単だった、ブライアンはすぐにアパートのリビングにとってかえした。

「何処に行っていたの?なにをしていたのよ・・・?」と
知りたがるエリザベスの手を引くとブライアンは上の階へあがり、
寝室のライトをつける。ベッドの上には間違いなく200万ドルの札束が転がっていた。

「明日の最初の仕事は君の銀行にいって
『家を売った金の3分の1を現金で支払わせてくれ』
というので、持ってきたがどうしようかと相談することにしようか?
それとも当分ここのどこかに隠しておく方がいいのかな」
「これ、どうしたの!!銀行強盗したわけ、」
「強盗、とは、いえない、コピーさせてもらった、
というかコピーのほうをもとに戻して本物をここに運んだということ」
「心配ない、何事も起きない」
「今時、こんな凄い額の現金が何処にあったの、
それにどう扱っていいかわからない、どれくらいあるかしら」
「やはりこれほどの現金を手にするということは、どきどきと緊張をさせられることだ」
とブライアンは感じていた。
1万ドルずつ帯がしてある、束を二人でかぞえると、210在った、
「210万ドルきっかり、こんな現金見るのはじめて、さすがに凄いわ」
「それにしてもどうすればいいの」
「ここのコンドミニアムはまず安全だ、君の鍵と暗証番号で2重に護られているし、
誰もこの現金のことを知っている人間もいない」

結局、空になっていたスーツケースの一つに現金を押し込み
クローゼットにしまいこんでそのことは忘れることにした。

ミッションビューホーのバリーの店で買った札入れに3000ドル、
ジャケットの内側に隠れるようになる、
やはり、そのときに買ったショルダーポシェットに左右1万ドルずつをしまいこんだ。
「あなたも、何かもっていないと気がすまないのね、私のカードがあれば大丈夫でしょ」

「まあ、僕は現金が好きなのかも知れない、
日本じゃ現金が一番確かだったから、それにこの世界もまた、
ある程度現金が通用する社会になってきているんじゃないかな」
「カード犯罪はますます巧妙になってきているだろ」
「金持ちが限度額なしのカードを持つ時代も終わるかもしれない・・だから」
「カード犯罪の凄さに保険会社も悲鳴を上げてしまって
損害の補償額は極端に下げられてきているし、」
「デビットカードで直接支払いというのもあるけれど」
「あれも、もしカードを無くしたりすると、
セキュリティーの厳しくなった分不正使用はそれほど心配ないにしても、
復活させるのには時間が掛かるから」

「僕の居た世界ではそうだった。なにが、便利でなにが正しいのかよく判らなくなってきているよ、
この世界でも同じことだとおもうけれど」
エリザベスは黙って聞いていた、そして、

「それより、お願いがあるのリビングからテラスに一緒にでましょう」
誘われるままに足を踏み出したそのテラスはゆうに150平米ほどの広さがあり
斜め左に夜の海がながめられ、右手のほうには奥に行くに従い背の高いビルが立ち並んでいた。

「このあたりにこんな高いビルが建ち始めたのはこの数年のことよ、
コンドミニアムも多いわ、ビバリヒルズよりも若い人むき、・・・
家の手入れに余計な神経を使う必要もないしセキュリティーもしっかりしているので人気が出たのね」
「私を背中からしっかり抱いて」
エリザベスのささやきに応え、
ブライアンはいまやこの感じが最高だと思い出した姿勢でエリザベスを抱きしめた。

素晴らしくゆたかな胸をこうして抱きしめるたびに、からだの中心にうずきを感じたからだ。
「今抱きしめている私と貴方自身を貴方の意識のベールで包み込んで、
そしてゆっくりと床から浮き上がるの、ゆっくりとよ」
それはブライアンにとっても神秘的な経験だった。

ふたりは静かにテラスの床を離れ上の階の高さを超えゆっくりと後ろにスライドする、
二人は屋上に立っていた。

「大丈夫とわかっていてもなんだかゾクゾクする、
人から見られる心配のないところでもっと高い空を自由に飛びまわることが、このさきあるのかもしれない」
ブライアンがエリザベスの耳に囁いていた。十分に周囲の夜景を堪能したふたりは、下のテラスにもどった。
「もうなんだか、興奮が収まらない、何とかして欲しい」
エリザベスがブライアンの手をとり寝室に駆け上がる。
「今日は、私お仕置きされるはずだったのね、
でも貴方のお仕置きの権利はしばらくおあずけにして、・・・・・
今は優しく、しっかりと愛されたい、急にいろんなことが恐くなってきたの」
エリザベスがしくしくと泣きじゃくりブライアンにしがみつく。
絶対に離さないと言うようにセクシーな白い脚でブライアンの下半身を締め上げていた。


 続 き へ

異空の神 TOPへ



お節介親父へのメイルは
下記アドレスをクリックしてください
keisei@sfkt01.com


  

H.Tanaka Copyright (C) All rights reserved

 


お節介親父の
   ホームページ PART T
    サイト案内
   



 Topページへのリンク




   1  趣味と買い物      2  子育て何が大切?       3 酒と肝臓       
   4ゴルフって趣味?      5   車とドライブ        6   趣味の散歩・・? 昭和記念公園

   7  デジタルカメラとビデオカメラ    8  仕事の相手は機械
                              じやないよ

   9  人生の大きな買い物 住まい選び  10 仕事の悩み・上司の命令  11 日本・日本人について



 アメリカで経験した
  考えさせられる

   12 笑い話1 サンフランシスコのチャイナタウン   13 笑い話2   夏ロサンゼルスは暑い

   14 笑い話3   マスターズゴルフ 大物タレント赤面



   宇宙を考える

   15 宇宙を考える1 宇宙                  16宇宙を考える 2 人類

   17  宇宙を考える 3 UFO               18 宇宙を考える4 タイムトラベル
 


    19 お節介親父の
                プロフィール